小規模宅地等の特例(相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)

小規模宅地等の特例

2017/11/30  2018/11/27

<目次>

1.特例の概要

 個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。
 なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。
(注)
イ 被相続人等とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族をいいます(以下同じです。)。
ロ 宅地等とは、土地又は土地の上に存する権利で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているものをいいます。ただし、棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものに限られます(以下同じです。)。


2.減額される割合等

相続の開始のあった日が「平成27年1月1日以後」の場合を記載しています。相続の開始のあった日が「平成26年12月31日まで」の場合は、国税庁HPをご覧ください。

 平成27年1月1日以後に相続の開始のあった被相続人に係る相続税について、小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとに一定の割合を減額します。

 
国税庁HPより

(注)
イ 「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます(以下同じです。)。
ロ 「一定の法人」とは、相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人(相続税の申告期限において清算中の法人を除きます。)をいいます。
ハ 特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。

 
国税庁HPより



3.特例の対象となる宅地等

 この特例は、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等のいずれかに該当する宅地等であることが必要です。

3-1.特定事業用宅地等

 相続開始の直前において被相続人等の事業(貸付事業を除きます。以下同じです。)の用に供されていた宅地等で、次の表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次の表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。

特定事業用宅地等の要件
国税庁HPより


3-2.特定居住用宅地等

 相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、次の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。なお、その宅地等が2以上ある場合には、主としてその居住の用に供していた一の宅地等に限ります。

特定居住用宅地等の要件
国税庁HPより

(注)
 1 「一時居住者」とは、相続開始の時に在留資格(出入国管理及び難民認定法別表第一(在留資格)上欄の在留資格をいいます。)を有する人で、その相続の開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の人をいいます。
 2 「一時居住被相続人」とは、相続開始の時に在留資格(出入国管理及び難民認定法別表第一(在留資格)上欄の在留資格をいいます。以下同じです。)を有し、かつ、日本国内に住所を有していた被相続人で、その相続の開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の人をいいます。
 3 「非居住被相続人」とは、相続開始の時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人のうち、その相続の開始前15年以内に日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下の人(その期間引き続き日本国籍を有していなかった人に限ります。)又は、その相続の開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人をいいます。
 4 「非居住外国人」とは、平成29年4月1日から相続又は遺贈の時まで引き続き日本国内に住所を有しない人で日本国籍を有しない人をいいます。
 5 平成26年1月1日以後に相続開始があった次の場合は、特定居住用宅地等に取扱います。

A 二世帯住宅に居住していた場合
 被相続人と親族が居住するいわゆる二世帯住宅の敷地の用に供されている宅地等について、一定の要件を満たすものである場合(二世帯住宅が構造上区分された住居であっても、区分所有建物登記がされている建物は除く。)。

B 老人ホームなどに入居又は入所していた場合
 次のような理由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等について、一定の要件を満たす場合(被相続人の居住の用に供さなくなった後に事業の用又は被相続人等以外の者の居住の用とした場合を除く。) 。

  • イ 要介護認定又は要支援認定を受けていた被相続人が次の住居又は施設に入居又は入所していたこと
    • a 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム
    • b 介護老人保健施設
    • c サービス付き高齢者向け住宅
  • ロ 障害支援区分の認定を受けていた被相続人が障害者支援施設などに入所又は入居していたこと


3-3.特定同族会社事業用宅地等

 相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業(貸付事業を除きます。以下同じです。)の用に供されていた宅地等で、次表の要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(一定の法人の事業の用に供されている部分で、次表に掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。
 なお、一定の法人とは、相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人(相続税の申告期限において清算中の法人を除きます。)をいいます。

特定同族会社事業用宅地等
国税庁HPより


3-4.貸付事業用宅地等

 相続開始の直前において被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。

貸付事業用宅地等の要件
国税庁HPより


3-5.日本郵便株式会社に貸し付けられている一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等

 日本郵便株式会社に貸し付けられている郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等については、次の要件すべてを満たす場合、特定事業用宅地等に該当するものとして、この特例の適用を受けることができます。

  • イ 平成19年9月30日以前から被相続人又はその相続人が旧日本郵政公社との間の賃貸借契約に基づき郵便局の用に供するために貸し付けられていた一定の建物(以下「郵便局舎」といいます。)の敷地の用に供されていた宅地等であること。
  • ロ 平成19年10月1日から相続の開始の直前までの間において、その賃貸借契約の契約事項に一定事項以外の事項の変更がない賃貸借契約に基づき、引き続き、郵便局舎の敷地の用に貸し付けられていた宅地等であること。(貸付先は、平成19年10月1日から平成24年9月30日までの間にあっては郵便局株式会社、平成24年10月1日から相続開始の直前までの間にあっては日本郵便株式会社)
  • ハ その宅地等を取得した相続人から相続の開始の日以後5年以上その郵便局舎を日本郵便株式会社が引き続き借り受けることにより、その宅地等を同日以後5年以上郵便局舎の敷地の用に供する見込みであることについて総務大臣の証明がなされたものであること。
  • ニ 郵便局舎の宅地等について、既にこの特例の規定の適用を受けていないこと。(賃貸人一代限り)



4.特例を受けるための手続

 この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。